結局どれが正しい?紅茶の分量と抽出時間

まもなく紅茶愛飲歴10年になる筆者が、飲み続けて分かったのは「紅茶の淹れ方ってほんとうに色々あるんだな」ということ。

今回は淹れ方のなかでも、とくに茶葉の分量と抽出時間についての話。


「英国流」美味しい紅茶の淹れ方

筆者が紅茶を始めたころ、最初に実践していた淹れ方は

茶葉6g・熱湯350ml・抽出時間3分

というものであったが、これを採用したのには以下のような理由がある。

資格を取るために勉強していた頃、紅茶の基本として以下のように教わった。

・1人前350mlのお湯に対して茶葉はティースプーン山盛一杯

・ティースプーン山盛一杯で茶葉3g

・「One for me, One for pot」に従い、ティースプーン1杯分を追加(人数分の茶葉に加えて『ポットのための一杯』の茶葉を余分に入れる、というイギリスの言い習わし)

・抽出時間はBOP以下(細かい茶葉)なら3~4分、OP以上(大きい茶葉)なら5~6分


抽出時間は最短で3分、幅を持たせて3~5分とするのが多数派である。

・英国王室御用達「ジャクソンズ・オブ・ピカデリー社」の公式見解

・学術機関「王立化学協会」の完璧な紅茶の淹れ方

においても抽出時間は3分とされた。

だが、これらにはしばしば「茶葉によって抽出時間を変えるように」といった旨の補遺が付されることを我々は決して見逃してはならない。


ここまでをまとめれば、1人前の紅茶を淹れるためには

茶葉6g・水350ml・抽出時間3分

この組み合わせで淹れるのがベストということになる。

(一人飲みなら抽出時間は3分で飲み始めれば、二杯目を5分~6分程度の抽出時間で味わえることにもなる)

しかし以上はあくまでも英国流に過ぎない。

例えば、日本では「One for me, One for pot」が通用しない、とも教わったことがある。

日本の水は軟水で、紅茶の味は非常に抽出されやすいのに対して、ロンドンの水は硬水で、紅茶の味の抽出を妨げる。

そのためにロンドンではより多くの茶葉を入れる必要があっただけで、日本で茶葉6gは多過ぎるというのだ。


5つの実例

では次に実際の紅茶のパッケージに注目してみよう。


リーフルダージリンハウス

まずは筆者の愛用する国内ブランド。

どれを取っても「茶葉3g・熱湯280~300ml・抽出時間4~5分」が推薦されている。

茶葉分量は少なく、その代わりに抽出時間が長い。

いきなり英国流からはかけ離れた淹れ方が示されているが、たしかにこの通りに淹れると実にうまい。

では、これらを英国流で淹れたらどうなるのか。

以前、試しにウバ(渋味の強い紅茶)を使い2倍の茶葉量で淹れたことがあるのだが、その時は渋味が強すぎてお湯で薄める結果となった。

逆に、ラプサンスーチョン(渋味の弱い紅茶)で渋味を出したくて2倍の茶葉量で淹れたこともあるが、正直な感想を言えばあまり違いは感じられず、余分に入れた3gは無駄だったと思ってしまった。(それ以降、渋味の弱い紅茶で渋味を出したい場合にはアッサムをブレンドするようになった)


ウェッジウッドとハロッズ

次に見ていただくのはイギリスの有名紅茶ブランド2社。

表記は無論、英語である。

淹れ方に関して、およそ以下のように書いている。

「最初にポットを温めておく。一人当たりティースプーン一杯として、人数分の茶葉と『ポットのための一杯』を入れる。新鮮な水を沸かして注いだら、3~5分待ち、カップに注ぐ。」

我々日本人からすれば驚くべきことに、正確な茶葉の重さも、注ぐ熱湯の量も、全く指定が無い。

これが

・イギリス人はそこまで気にしない

・イギリス人はそんなことを指示するまでもなく心得ている

・各々のやり方があるので一概に決め付けない

のどれを意味するのか、はたまた別の理由があるのか。

それは定かではないが、いずれにせよ本家英国流では「One for me, One for pot」を非常に重んじているということが分かった。


では、いくつかの変則的な例を挙げよう。

ウィッタード

日本では未だお目にかかる機会の少ないイギリスの老舗だが、こちらには「ティースプーン一杯(およそ2g)」といった目安の分量が記載されている。

「ティースプーン一杯で3g」としているブランドがあることから見ても、ウィッタードは比較的少ない茶葉を想定していることが分かる。

おまけにウィッタードの淹れ方解説には、常套句であるはずの「One for me, One for pot」の文言が無い。

このことから、先に書いたウェッジウッドやハロッズと比べると、このウィッタードはより少ない茶葉での抽出を勧めていることになる。


Gclef

阿佐ヶ谷に店を構える国内ブランド「Gclef」は様々な高級紅茶を取り扱っているが、淹れ方は英国流と日本流のハイブリッドだ。

熱湯150mlに対して茶葉2g(~3g)と少なくない分量だが、抽出時間は5分程度と、この分量を軟水で淹れるにしてはかなり長い。

今回選んだ茶葉がフルボディ気味の重めな紅茶ばかりということまで考慮に入れると、茶葉分量を増やすことで紅茶の香りのみならず味にも深みを持たせることが出来るので、

程よく多めの茶葉で長く抽出して「味を限界まで引き出してギリギリ美味しく飲めるレベルまで攻めた淹れ方を勧めている」と見てもいい。


ハロッズ日本仕様パッケージ

最後に再びハロッズを見てもらう。

これは100gあたり8000円の春ダージリンだが、英国ブランドにもかかわらず裏面に日本語での淹れ方解説を記載した、完全日本仕様パッケージである。

これには

1.カップとポットを温めておく

2.茶葉はカップ一杯あたりティースプーン一杯(約3g)(「One for me, One for pot」の記載無し)

3.新鮮な水を沸かし、湯量はカップ一杯あたり約150ml

4.抽出時間は2分30秒~3分

5.ポット内を軽くかき混ぜて、カップへ注ぐ

と書かれている。

英国向けに「茶葉の分量指定なし・湯量指定なし・『One for me, One for pot』」とまで書いたハロッズが日本向けに

「約3g・約150ml・2分30秒~3分」という答えを仮初めにも提示してくれたのだ。

これには深い意義があると筆者は考えている。


興味深い参考資料2項

1.紅茶鑑定

紅茶のテイスティイング(鑑定)方法には

「3g・150ml・3分」

という一応の基準がある。

これは必ずしも飲んで美味しい淹れ方とは限らないが、茶葉の要素を分析するのに適した淹れ方として定められている。

一つの参考となる基準だ。


2.ティム・ドフェイ氏

ロンドンに紅茶専門店を構えるティム・ドフェイ氏は新進気鋭の紅茶専門家だが、彼の著書では大変興味深い意見を耳にすることができる。

斬新すぎる!究極の紅茶の淹れ方が新しい」で紹介した通り、

4g・170ml・30秒~60秒

という、それは我々保守派にとって天地がひっくり返るほどの驚くべき淹れ方であった。(おまけに氏は、タブーであるはずの二番煎じや、低温での抽出さえも推薦している)

しかしこれには日本流の緑茶の淹れ方が影響していると見られ、緑茶と紅茶が元を辿れば同じ植物であることを考えると、大いに傾聴するべきところがある。

なお、氏は「熱湯を注いだ後30秒以降は10秒ごとにテイスティングして、好みの味になった時点で完成とする」という点を強調している。


結論

ここまで読めば分かる通り、紅茶の淹れ方はまさしく千差万別である。

国により、水により、茶葉により、人により。

こうなってしまうと結論を出すどころではなく、何もかも収拾がつかない状況であるが、それでも筆者は一つの結論を出すことにする。

結論:

もしも購入した茶葉のパッケージや、そのメーカーのウェブサイトなどで「美味しい淹れ方」なるものが紹介されている場合は、それに従う。

それが無い場合には

「3g・150ml・3分」で淹れてみて、その後自分の好みに応じて分量・時間を調整する。

以上である。

ここまで読んでくれたあなたに、この逸話を贈りたい。


王様が宮廷料理人を呼び出してたずねた。

「世界で一番美味しい食べ物とは、何かね」

料理人は答えた。

「それは、塩でございます」

王様はもう一つ質問した。

「では、世界で一番まずい食べ物は何かね」

料理人は答えた。

「それも塩でございます、王様。好みに合う塩加減の料理は最高に美味しく、好みに合わない塩加減の料理はいかなるものでも最低の味です」

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